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絢爛舞踏祭





仲間のイルカ達が陸を目指して泳いでいる。
必死に呼びかけたが、まるで気付かない。
ただ、そこに行かなければならないという
強迫めいた様子だった。

集団座礁。
成す術も無く、仲間達が陸へ乗り出す姿を見つめていた。
覚えているのはそこまでだった。

『…ン…かい?』
まどろみの中、声が聞こえた。

『…助かったのは君だけだよ』
人の声、イルカとは違う、人間の言葉。
『ウイルス形式のマイクロマシンに感染したんだ。
でも、君だけが適応出来たというべきか…』
一人の人間が立っていた。人間。男。
30歳くらい。丸い眼鏡をかけている。
なぜ、知らないはずの事が頭に浮かぶのだろう。
ウイルス形式のマイクロマシン、バイオ・サイボーグになる病…、
知能や肉体を強化するもの。
初めて聞く言葉なのに、昔から知っているような不思議な感覚。

ゆっくりと状況を噛み砕く。
『君は眠っている間、記憶注入によって世界の事や、
僕たち人間の言葉を学習したんだ』
周りを見渡す。
自分は、何かのカプセル状のものの中にいた。

「ここは?」
初めて人語を発した瞬間。軽い驚きがあった。
『うん、言語変換もOKだね。ここは民間の海洋環境研究所さ』
「仲間は…?」
『死んだよ…。きっと急に知性を得たものだから、
パニックを起こしたんだろう』
「なぜ、私は平気だった?」
『発病が遅れて、知性を補佐する記憶学習が間に合ったか。
そんなところだと見ているが…』
しばらく沈黙があった。
「これから、どうやって生きていけばいい?」
男は、眼鏡を指で押し上げて微笑んだ。
『君は、もう我々と同じ世界に生きるものだ。
好きなように生きるといい』

…好きなように生きる。
しかし、それは今まで過ごした海の世界ではない事を、
軽いジレンマを伴いながら何となく理解させられた。

『海へ帰るのもいい。けれどもね、これから君の海は無限に広がる。』
仲間が知性をコントロール出来ないまま、向かった先。
今、自分はそこに立っている。
「………」
一匹のイルカの心は決まった。

こうして彼は、新しい世界への第一歩を踏み出したのである。
彼が後にポイポイダーと名乗り、
無限に広がる海を照らす、黎明の光となるまで。
それはまだ、数年先の話になる…


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