第3回「BALLSと宇宙開発」
知類が生まれて地球上がお祭りのような大騒ぎしていたころ、宇宙開発は新しい局面に入っていた。人間を宇宙に送り込むのをやめようとしていたのである。
元々、なんで人間を宇宙に送りこむのかについては議論があった。
技術者から見れば人間はどう見ても地球仕様である。言い方を変えれば人間を宇宙に持ち込むのは地球環境を宇宙に持ち出すのに等しい。
1グラムあたりの軌道上への打ち上げコストが金などと比べてもべらぼうに高い宇宙開発から見れば、人間を宇宙に送り込むのは、相当無駄ではないかと言われていたのである。
それでも人間が宇宙にいくのは政治的ロマンチシズムと、まあ人間の持つ柔軟性、というものであったが、時代は進み2070年を過ぎると、それこそ、知類がいる。
宇宙仕様に限りなく近いロボット知類や元人間の完全機械化サイボーグがかなりの数存在し、いまどき誰それさんが宇宙に行きましたという政治効果もないと判断されたこともあり、急速に人間を宇宙に送ろうという意思が、しぼんだのであった。
そして、宇宙開発の手はロボットに移った。
それもただのロボットではない。自己を複製する工場を内部にもった“オートマン”型ロボットである。
ノイマン型コンピュータの始祖でもあるフォン・ノイマンが夢想したこのロボットを宇宙で実現させようと言うわけである。
月にこのロボット達を打ち上げて増殖させ、月を拠点に宇宙開発を進めようという考えである。
この計画はロボット技術で突出したアドバンテージを持つ未来日本の主導で行われた。
元々同国はベレー帽をかぶった漫画の神様の影響の下、ロボットへの偏見が大変低く、そこで夢を受け継いだ人々がロボット開発にしのぎを削っていたのである。
そして、ロボットが作られた。丸い形からBALLSと名づけられた、その後の太陽系の方向性と運命を決定付ける存在は12機が建造され、宇宙に打ち上げられた。
最初期のBALLSは当時の宇宙開発の研究総責任者だった櫻井裕博士の脳コピーを焼き付けられ、宇宙へ飛んでいくことになる。
そしてかの有名なやり取りである
「私から私へ、宇宙はどうか」
「私から私へ、こちら宇宙。……星の海は、本当に綺麗だ」
という二人の博士のやり取りから、一大宇宙開発がはじまる。
ゲーム、絢爛舞踏祭に登場する太陽系だけで80兆を数えるBALLSたちは、みなこの最初の12機から生まれ……生産されたものである。
ゲームやアニメに出て来るグランパは、この最初の12機の生き残りの一つだ。
その性能は第1世代だけあって最低ランクながら、知類の宇宙開発のその全部を見つめながら、決定的局面のほぼ全部を間近に見ただけあって膨大な経験情報を有しており、最新鋭の量産BALLSをケースによってはしのぐ処理をやってのけることが出来る。
ゲームにおいては掌帆長として艦内で走り回っているその姿を見ることが出来るだろう。

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