第6回「BALLSの世紀(2)」
BALLSを知類がコントロールする試みは絶えず行われて失敗していたが、その一方でBALLSへの命令権が日本から世界中の知類全部に委譲されたのは、特筆に価しよう。
うがった見方をすれば外圧に耐えかね、あるいは無限に広がっていくBALLSの恐怖を、誰かどうにかして欲しいと思ったのかも知れない。
だが、作者はあえてそう言う書き方をせず、こう書く。
人類に準じる地位を全員に与え、万物の霊長の立場から、自分から降りた、ゴージャスタイム(絢爛時代)の心意気が、この頃もまだ残っていたと。
歴史を悪意に解釈するよりも、善意に見たほうが面白い。そう思うからである。
BALLSはBALLSへの命令権が知類全域にわたるのを看過し、一部においては歓迎するように、この情報を伝えるようなことをした。星空にプラズマを流してこのことを描いたのである。
BALLSは、地球と月の全ての共用財産になったのである。
時に2122年。そして、本格的なBALLSの世紀がはじまる。
BALLSの一部は地上に戻ってきた。その莫大な生産力を地球でも役立てようと考えた人々がいたからであった。
そして数年でBALLSは地球をも埋め尽くし、そして、一家に一台はBALLSがいて、そして動き回るようになった。
BALLSはどんなところにもいた。海の中でも基地を作るために導入され、自己を改良し、高い山にも山岳仕様のBALLSが村々に学校を建て始めた。知類のあるところのその全てに、BALLSの丸い姿が見られるようになった。
BALLSとあまりに近くすごしていた知類は、その多くが大人になってBALLSの姿が見えないだけでひどく不安になる症状まで示した。
そして、BALLSは資本主義を破壊した。BALLSの生み出す莫大な生産能力は、あらゆる工業製品の付加価値をほぼ完全に消滅させた。先進国クラブがこのことに気づいた時には、もう遅かった。
いまや先進国という概念も、なくなった。土地さえあれば、いや、土地がなくても資材があればBALLSが工事し、あるいは高層建築を開始する。
BALLSを地球・月の癌細胞だと主張するものもいた。
だがそう言う人々も、BALLSを利用して自分達が生活していることは、認めざるをえなかった。
そして結局、資本主義の崩壊が宇宙開発を本格化させた。
21世紀最初の頃に高くて払えないやと思っていた火星までのバス代が、がんばれば払えるくらいには現実的になったのである。BALLSにロケットを作らせ、BALLSが火星に到着すればいいと言う話になったのである。
そうして、人はBALLS、この小さな丸い、偉大な友とともに宇宙を目指し始めた。
BALLSが耕し、知々がこれの後を追うという形で。
22世紀後半以降は、BALLSの後を知類が追っていく時代である。

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