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第5回「BALLSの世紀(1)」
BALLSというロボットがある。体内に工場を持ち、まずは自分のコピーを次々と量産し、月や小惑星を資源化して建造物を作っていくという存在である。
これが、月面上で12億機を越えた。知類の常駐者2000人に対しての話である。
月面上はMADE IN BALLSであふれかえった。
2100年代、22世紀はBALLSの世紀である。
BALLSに自己改良(この頃には進化という概念自体が廃れた)機能が付与されたのは最初のBALLSの打ち上げから30年たたない頃である。
BALLSは自己を改良し、様々な機器に自らを組み込み、そして発展していった。
BALLSを知類として認め知権を与えようとする運動もあったが、すぐに潰されている。
数が、多すぎたのである。遠からず(実際には2118年)に100億を突破するBALLSが一斉投票すれば、どんな国の首長も首がすげ変わってしまうのである。
数の恐怖がBALLSを知類から遠ざけた。
一方この成功を見て、BALLSを生み出した日本以外の同様機能品も、幾度か作られた。
そして、全て失敗した。
多くの国が、BALLSが同様機能品をブロックしていると疑い、日本を攻めたてた。
実際、国家首脳の知らないところでBALLSは同様機能品を死滅させているのだから、この非難はまったく正当なものである。が、証拠を捏造して発言することが多かったのは、困りものである。
その急先鋒はBALLSの存在で宇宙開発の分野において急速に二流国に転落した宇宙開発リーダー国達である。
彼らは宇宙環境の保全とか言う新語まで生み出した。
原則地球の環境を他に移転させるという意味の宇宙開発において宇宙環境の保全もへったくれもない話であるが、この言葉自体は、地球生まれの知類にとってはなかなか理解できる概念だった。
世論は動き、BALLSによる開発を停止しろという話になった。
そして実際に、試みられた。 周囲の圧力によって自らのビジネスに支障が出始めた日本知類の手によって。喧嘩してまでBALLSを守ろうとする者はいたかも知れなかったが、猫娘とちがってまあ、あんまりかわいくないので数は少なかったと思われる。
そして(毎度のごとく)失敗した。確かに初期型のBALLS20万機は作動を停止したが、残る120億機は相変わらず宇宙開発にいそしんでいた。
停止したBALLSも即座に資源化され、翌日には全てが新型となって作業に復帰した。
原因は直ちに調査され、自己改良の途中で命令プロトコルが変更され、暗号化されていることが発見された。
BALLSが作り出す流れをとめることは誰も出来ないことが確認されたのは、そこから一ヶ月である。
その頃にはBALLSは日産で100万機を越え、月は、空を見上げても分かるほどにその形を変容させていた。

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