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第7回「ボロ・ステーション」
知類が事実上の資本主義社会の崩壊後、宇宙を目指し始めた後、最初にぶちあたったのは、重力井戸である地球の底から、資材を持ち出す大変さ=コストの高さである。

しかし、もう知類は昔の知類ではない。厳密には知類そのものは同じだが、こちらには莫大な生産能力を持つ小さな丸い友、BALLSがある。

100億を越えるBALLSが投入され、小惑星を資源化して“それ”を作り始めたのは2134年である。それは地球と宇宙を繋ぐ、架け橋であった。

名前を、先人に敬意を表してボロという。
全長8000kmで日本列島の倍以上の長さがある、端に向かって強烈なテーパーのかかった棒、あるいは箸の片っ方である。

これが地球の上を、くるくる回り始めた。いわゆる軌道エレベータと違うのは、地上から見て静止してないように見えることである。

この箸の端に、飛行機で乗りつけ、つかまっていれば、宇宙に放り投げられるという仕組みである。同様質量の物体(隕石)を反対側の端にくくりつけて宇宙から持ち込めば、エネルギーロスは最小にしつつ、持ち込んだものは資源にもなるという話である。

見上げれば、2140年代には昔と随分違った空がある。
月はいびつな形で日本月と呼ばれ、遠近感がわからなくなるくらい巨大な棒が近づいてきたり遠ざかったりしている。

第2、第3のボロステーションも作られ、そして月の上にも同様の物が作られた。
まるでクリケットのボールのごとく、荷物はどんどん投げられていった。
その量は年間30万トンにあがる。

え、仕組みがでかい割に運ぶ量が小さい? その通り。それがこれまで散々宇宙開発を挫折させた、難しさの証明だった。だが年間30万トンでも前世紀から考えれば信じられない輸送量である。

それに、本当に宇宙に送り出すものは、さして多くはなかった。
宇宙では地球とは比べ物にならないBALLSがまっていて、必要なものはなんでも用意して待っている。
運ぶものは知類と、少数の手荷物。それだけでよかったのである。

以前は怖くて通り抜けられなかったバンアレン帯の外、誰もたどり着けないと思っていた惑星が、ついに射程の中に入り始めた。

都市船という、巨大な宇宙船をBALLS達が建造し始めていたのである。
BALLSが並んで宇宙を舞い、巨大な宇宙船の外壁にとりつき、一部は制御部品として埋め込まれていく。

そうして、生身の知類でも生きることが可能な軌道都市が生まれはじめた。
資本主義の崩壊から数えて50年ほど後のことである。

後の士翼号一機100円という恐ろしい話(設定)は、このBALLS達が作る莫大な生産能力を背景にしたものである。

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