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第14回「最低接触戦争(2)」
BALLSの外宇宙への劇的な移動は、大きなニュースであり、同時に、初めて総体としての知類が
BALLSに疑問をもった瞬間だった。

事を目の当たりにし、それまで従順な奉仕者としてのBALLSに慣れた知類は、狼狽した。

誰も彼もが狼狽した。狼狽するだけの、理由があった。
2220年の段階で、既にほとんどの生産活動はBALLSに移管されている。
そして今更後戻り出来ない位、知類はBALLSによる生産とリサイクル生活に浸りきっていた。
最新式の自動車でも10日も待っていたらBALLSが作ってくれる。
死んだら死体をBALLSが運んで行き、そしてまた、なにかにリサイクルされる。
何かにつながって行く。
そんな生活に慣れきった人々は、容易かつ激しく動揺した。

同時代人の評に従えば、だれもが足下にBALLSがいることに慣れ過ぎていた。
と、くだんのタフト少佐の回想にある。
(この時代、道や床は強化ガラスが普通である。そのガラスを隔て、地下にBALLSが通る通路が
作られていたのが普通だった。ゲームでも廊下床下でBALLSが走る姿を見ることが出来るだろう)

動揺は不安を呼ぶ。不安は不安定を呼ぶ。
国家レベルでの社会不安が修正資本主儀下における株式市場=資源のやりとりに直撃し、誰も彼もが資源を手元におこうとした。資源さえあれば、自分用のBALLSを生産すればいいと考えた。

この豊かな生活が、なんらかの理由によって阻害されうるという可能性を思い知り、知類は初めて、
恐怖することになる。

実際に戦火をかわすよりずっと前から、戦争は始まっていたのだ。

いまだ事件開始から2カ月の段階で、BALLSの推定数が火星ラインより手前の段階で3兆個以内と推定された時、恐怖は頂点に達した。

この恐怖が、地球上で起こりそうだった一つの大戦争を起こる前に終結させたのは、前回書いた通りである。
物事は、一面だけではない。どんなものにも裏はある。

事件開始3カ月。BALLSがなぜ移動したのか、どこに移動したのか。それを知ることが、国家の安寧をもたらすと多くの指導者が理解した。

この未曾有の事態を受けて、アメリカ航空宇宙軍ジョージ・タフト少佐は、BALLSを追うように外宇宙方面へ移動する事になる。

この時少佐の娘がはじめてのピアノ演奏会が間近に迫っており、少佐は演奏会にいけないなら俺は軍をやめてやると叫んでいたが、結局宇宙にいる数少ない非AI知類として、冷凍睡眠BOXに押し込められて飛んで行くことになった。

この時、まだ何が起きているのか、知類は分かっていない。

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